様々なクライアントの事業成長やDXのサポートをしている中で、「AI」「DX」「CRM」「CDP」「パーソナライズマーケティング」「生成AI」といったバズワード多くの企業で飛び交っている一方で、こういったテクノロジーの導入それ自体が目的となって肝心の本質的な顧客体験とLTV(Life Time Value: ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)の向上がかなり軽視されていると感じています。AI、DX、CRM、CDPなどの先進的な概念や技術は、確かに強力なツールです。しかし、これらはあくまで手段であって目的ではありません。顧客体験の向上による高LTV(高リテンション率、短期間のペイバックピリオド)の実現、それによる売上や事業の成長が本来の目的であり、これを実現する目的や戦略に基づいて適切な営業・マーケティングツールを選択していかなければなりません。本記事ではなぜLTVやリテンション率といったKPIが重要か、どうやって計算・分析すべきか、どう改善すべきかご紹介します。事業成長やDXのよくある落とし穴流行りのツールの導入自体が目的になっている:継続購入の習慣につながるコアアクションを理解していない状態や改善すべきKPI、グロースの全体戦略が定まっていない状態でCRM/MAツールやCXツール、AIツールを導入しても効果的な成果は得られません。LTVが低い状態(多くの場合はテンション率が低い状態)で顧客獲得に投資する:安易な新規顧客獲得や海外展開で売上を伸ばそうとする。結果、顧客離れが加速し、国内での売上も低迷し海外展開もうまくいかない。データ基盤の欠如:データを適切に収集・分析する体制が整っていない状態では、改善すべき点が明確にならず、一か八かの施策にかけることになり、LTVの改善、継続的な売上の成長は見込めません。組織の分断:システム部門、営業部門、マーケティング部門、製品開発部門が分断してばらばらな動きをするため、一貫した戦略のもとLTVの改善に取り組めない経営層のコミットの欠如:LTVを主要KPIと据えた事業の成長にはトップがコミットし、部門横断的に協力を行いながら一定のリソースをきちんと投入する必要があります。しかしながらツールの導入を現場に指示するだけでその後の運用や戦略と結びついておらず有効活用できていないのが現状です。頭では理解しているつもりでも実行に落とし込めていない:LTVの向上が重要だと理解しているつもりになっているが、いざ実際の営業・マーケティング・製品開発の実行段階になるとすっかり忘れ去られ場当たり的な施策の実行が行われているなぜLTV・リテンション率が大事か?顧客獲得コストは過去8年で3倍超に増加: オンライン上での顧客獲得競争は急激に激化しておりLTVの向上なくして事業の成長は望めません。リテンション率がトップ製品とそれ以外を大きく分ける:LTVを高める上での最重要指標であるリテンション率の違いがカテゴリリーダーとそれ以外を分けます。リテンション率が悪いとどれだけ投資しても売上をのばすことは不可能:LTVの計算手法:LTVの計算方法を検索すると一般的には以下のような計算のされ方がよく見かけますが、この計算方法は様々な課題があり実務ではおすすめしません。一般的なLTVの計算方法:LTV = (平均購入金額 x 購入頻度 x 平均購入期間) 一般的なLTVの計算方法の課題:本来の顧客のカスタマージャーニーやリテンション率の時間的推移が無視されている:本来顧客が一定の頻度で一定の金額の購入を行ってくれたり、一定の比率で離脱していくことはありません。したがってこの計算方法だと実際の顧客の理解を行うことが難しくなります。正確なペイバックピリオドが計算できない:例えば小売企業だとLTVの大部分は初回購入が占める割合が大きくなります。従ってこの計算方法でペイバックピリオドを計算すると正確でない数値を計算してしまうことになります。推奨するLTVの計算方法:実務レベルでLTVとリテンション率の分析と施策の実行を行うには、顧客を初回購入月ごとのコホートに分けて、初回購入月の月次客単価とレベニューリテンション率の推移を計算し、その数値からLTVを算出することが必要です。健全なレベニューリテンション率のベンチマークはビジネスモデルによって大きくことなりますが、以下に架空の小売企業のレベニューリテンション率の推移とLTVをコホート別に計算した実例を掲載します。LTV = 初期収益 x SUM(レベニューリテンション率)レベニューリテンション率(m) = mカ月後の収益 / 初期収益架空の小売企業のコホート別のレベニューリテンションとLTV:コホート別のレベニューリテンション率に基づくLTVの計算方法によるメリット:時間経過に基づく顧客の健全性がどのように推移しているか理解ができる:時間経過とともに顧客の健全性やサービス、製品が顧客に受け入れられているかより精緻に分析が可能となります。習慣化モーメントの特定:顧客がどの時点から製品利用を習慣化し継続利用にいたるかのポイントが特定できLTVにインパクトの大きい適切なアクティベーションプロセスの設計が可能となります。より正確な習慣化モーメントの特定にはレベニューリテンション率ではなくリテンション率を用います。正確なペイバックピリオドの計算が可能:経過月ごとの累積的な収益が計算可能なので正確なペイバックピリオドの算出が可能となり、ビジネスの健全性の評価や予算を投下すべきかの意思決定に役立ちます。プロダクトマーケットフィットを評価できる:高いGMVリテンションは、次の2つのうちの1つを反映することができます:(1) ユーザーのほとんどがリテンションし、長期にわたって取引を続けている、または(2) ユーザーの一部だけがリテンションしているが、長期にわたってプラットフォーム上でより多くの取引をしている。 これらのシナリオのどちらであっても、プロダクト・マーケット・フィットに関してはかなりポジティブであり、無視できない割合のユーザーがあなたのプロダクトから価値を見出していることを示しています。良好なLTVとレベニューリテンション率とは?レベニューリテンションカーブがフラット、もしくは右肩上がりとなっているか:リテンションカーブは多くの場合時間とともに平坦になることが理想です。製品や顧客体験の改善に成功すると右肩上がりのスマイルカーブを描くこともあります。ベンチマークとの比較:これについては後述しますがリテンション率をベンチマーク対比比較することで製品や顧客体験が競合対比優れているか比較することが可能です。時間とともにレベニューリテンションカーブが改善しているか:継続的な製品・営業・マーケティングの改善とともに理想的には古いコホートより新しいコホートのリテンション率が改善されていることが理想です。上記の例では初回購入月の月次客単価は伸びている一方で、新しいコホートほどレベニューリテンション率が低くなってしまっています。この場合LTVはどんどん悪化していくため顧客体験(製品・営業・マーケティング)の改善が必要となります。LTVは製品や企業ごとに大きく異なる一方で、ユーザーリテンション率とレベニューリテンション率はビジネスモデルごとにおおまかなベンチマークが存在します。toCソーシャルやトランザクショナル型のユーザーリテンション率の計測方法は一般的にアンバウンデッドユーザーリテンション率(特定の日時以降に一度でも再購入(もしくは再訪)したユーザー数 / 初期のユーザー数) × 100という計算手法を使うのが一般的とされています。LTVをどうやって改善するかLTVの向上には顧客単価や製品の購入・利用頻度、リテンション率から計算することが可能ですが、単価や利用頻度は製品やサービスの性質そのものによって決まるものであって改善やコントロールを行うことが難しい一方で、リテンション率は顧客ニーズを的確に掴んだ製品開発・営業・マーケティングを適切に実行することで大きく改善することが可能です(一方で適切でない施策を実行してしまうと一気に悪化しやすい)。そこでまずはリテンション率の改善に重きを置くことを推奨します。特にカスタマージャーニーの序盤、顧客全員が体験する製品・サービスに触れ始める初期のアクティベーションプロセスの改善が最もリテンション率・LTVの改善に大きなインパクトがあります。適切なアクティベーションプロセスで顧客の製品の価値を感じてもらい、製品利用を習慣化させることができればLTVの大きな改善が可能です。本記事ではLTV(ライフタイムバリュー)、そしてリテンション率について検討しました。次回以降の記事では具体的にどのようにLTVやリテンション率を改善していくか、さらに詳細に見ていく記事を掲載していきます。キーワード顧客体験、LTV(顧客生涯価値)、ライフタイムバリュー、顧客中心主義、バズワード、AI、DX、CRM、CDP、生成AI、パーソナライズマーケティング、データドリブン、顧客満足度、NPS、顧客維持率、リテンション率